感情を吐き出す心構え【その①】

これまでの講義では、「感情を吐き出すべきか?」という点について詳しく解説してきました。

感情を吐き出すべきか判断する基準は、「①予想外の出来事だったか?」、「②ゴールを達成する上でプラスになるか?」の2点でしたが、これらの基準に照らし合わせて考えてみれば、これまで我慢してた感情の多くが「娯楽」になるだろうと思います。

しかし予想外の出来事が発生し、尚且つその事件がゴールを達成する上でマイナスの影響を与えるのであれば「正しく感情を吐き出す」必要があります。

感情を外に出すべき時にちゃんと出しておかないと、ストレスが貯まるだけでなく、さらに被害が拡大するリスクがあります。ですから今回の講義では「感情を吐き出すときの心構え」について詳しく解説したいと思います。

MEMO

今回の講義で取り扱う感情とは、ポジティブな感情ではなく、ネガティブな感情のことを指します。(怒り、嫉妬、不満、軽蔑 等)

講義の中で「ネガティブな感情」と毎回記載すると煩雑になるので、今回は「怒り」とだけ記載することにします。

正しく感情を吐き出す作法

今回の講義では、正しく感情を吐き出す作法を3つご紹介します。

その1)百歩譲る

怒りの感情を爆発させるとそれだけで不利になりますから注意すべきです。

あなたが怒るべきだと周囲がわかっている時ですら、怒りを周囲にまき散らした罪で、あなたの正しさが減少してしまうのです。

それどころか周囲の人からは「あの人(あなた)が怒るのもわかるけど、あんなに怒らなくてもねぇ~」と思われてしまう可能性の方が高いです。

ですからまず最初にやるべきことは、百歩譲って怒りの原因となっている相手の言葉に耳を傾けることです。

相手の言葉に耳を傾けることで、相手がどう感じているのか?どういう理屈で行動したのか?というところをしっかり確認するようにしてください。

正しく感情を吐き出そうにも、前提となる情報が手元になければ、どこから攻撃すればいいかも判断がつかないと思いますから、まずは情報を収集することに専念するのです。

相手の言葉をよく聞き、よく吟味してから反撃に移ると、それだけで勝率はグッと上がります。

その2)丁寧な言葉を使う

大人になれば「気にくわない相手がいたらボコボコにする」という理屈は通用しないでしょうから、感情を吐き出す状況でポイントとなるのは「言葉の使い方」です。

言葉の使い方が重要な理由は、「言葉を使うだけで脳が活性化するから」です。脳のなかでも言葉に関係する部位である「言語野」は脳の中でも大きな領域を占めていますし、運動に関係する部位である「運動野」のなかでも、もっとも大きいのは唇や舌を動かす神経系です。

とはいえ「言葉を使う」といっても、頭のなかに浮かんだことを片っ端から発言すればいいというわけではありません。ここでいう「言葉の使い方」とは、「思考の言語化」のことを指します。

多くの人が思考の言語化と聞くと、「感情の言語化」をしてしまうので誤解しないようにしてください。例えば「ムカつく」と思ったから「ムカつく!」と発言するようでは、感情優位な状況から抜け出せません。感情優位な状態とはIQが下がった状態であり、IQが下がれば議論に負けてしまうこともありますから注意する必要があるのです。

あくまでも自分の感情ではなく、コミュニケーションで勝つための「思考」を言語化することに注力するのです。

同様に、相手が汚い言葉や、無礼な言葉で攻撃してきたときも、相手の感情に反応するのではなく、その言葉を使った人の思考パターンに反応することに集中してください。

例えば「お前馬鹿か?」といわれたら、「え?普段からあなたは馬鹿という言葉を使っているんですか?」とか、「なぜ?その言葉を選んだのですか?」などと質問してみるのです。

実際問題として、あなたが感情を吐き出そうと判断した時点で「予想外」の出来事が発生しているわけですから、あなたの頭のなかは「なぜ?この人はこんなことをしたのだろう?」という疑問があるはずです。

その疑問こそが思考の正体であり、思考といっても難しく考える必要は一切ないのです。

なぜ?この人はこんなに馬鹿なことをしたんだろう?

なぜ?この人は悪いことをしたのに謝らないのだろう?

なぜ?この人はわたしに失礼な態度をとるのだろう?

なぜ?この人は善悪の基準がわたしと違うのだろう?などのあらゆる疑問について言語化し、相手にぶつけてみてください。

丁寧な言葉を使うだけで相手もあなたも冷静になることができますし、認識の違いについての理解を深めることができるかもしれません。

またお互いの認識の違いを理解し、ゴールを共有できることが確認できれば、一緒に解決策を考えることも可能になります。

なお、言葉は相手を打ち負かす効果的なツールである一方で、逆に打ち負かされる危険性を秘めた危険なツールであることも認識する必要があります。

つまり相手からぶつけられる言葉とは、「負のアファメーション」(アファメーションにについてはModule6参照)なのです。

感情を吐き出す現場では、注意しないとお互いが負のアファメーションをぶつけ合う場面が多くなりますが、負のアファメーションをぶつけ合えば当然お互いのエフィカシー(自己評価)が下がります。

例えば、相手から発せられる負のアファメーションが心に直撃して自己評価が下がってしまうこともありますし、逆に自分の気持ちを上手に言葉に置き換えられないがために「なぜ?気持ちを上手に表現できないのだろう?」と自分で自分のエフィカシーを下げてしまうこともあります。

言葉は本当の意味で武器になりますから、日頃から言葉の運用能力を磨く努力をすることが大切です。言葉で戦いたい状況にも関わらず、言葉が出てこない、、、、という残念な状況を回避したければ、日ごろから「丁寧な言葉を使うこと」や、「自分の気持ちを言葉にする練習」は怠らないようにすべきです。

その3)絶対に勝つ!

感情を吐き出すと決めたら、「絶対に勝つ!」ことだけを考えるようにしてください。なぜならば、勝たなくてもいいのであれば、最初から感情を吐き出す意味がないからです。

くれぐれも「勝ってもいいし負けてもいい」という精神状況で感情を吐き出すのはやめるべきです。なぜならば、相手の思わぬ逆襲に遭って被害を拡大させてしまうリスクがあるからです。

ここでいう「勝つ」の定義を一言でいうならば、「心が満足すること」です。具体的には「最低でも痛み分けに持ち込む」ことを念頭に置きましょう。

予想外の被害をあなたの「正しい怒り」によって、取り戻すことができれば「勝ち」ですし、それ以外の結果であれば「負け」というわけです。

最後に&次回予告

怒りを爆発させるときには、「絶対に勝つ!」と腹をくくり、百歩譲って情報を入手したのちに、冷静な言葉で反撃するのがセオリーです。

指摘されてみれば「当たり前」のことかもしれませんが、実践しようとすれば意外と難しく感じる人も多いはずです。

何事も練習しないと上達しませんから、来るべき大きな戦いのために、日頃から刃を研いでおくことをおススメします。

次回は相手から思わぬ反撃を受けた時の心構えについて解説したいと思います。お楽しみに!

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