感情を出すべきか?出さないべきか?

前回の講義では、感情は現象であるということを明らかにしました。ようするに感情は「生理現象」なのです。

感情は生理現象なのですから、我慢をするのは不可能です。トイレを我慢するのも、葬式で笑いをこらえることも難しいでしょう。

今回は生理現象として発生した感情を、表に出すべきか?出さないべきか?という点に注目したいと思います。

感情とカラダの反応

楽しい時は笑います。悲しい時には涙が出ます。怒ると顔が真っ赤になります。恐怖を感じるとガタガタ震えます。不満な時はつまらない顔になります。緊張するとカラダが固くなります。

以上のように、「感情」と「カラダの反応」はセットなのです。感情が発生した時に、カラダの反応をゼロにすることは誰にとっても至難の業でしょう。

ただし、感情は頭の中(情報空間)での生理現象ですから、トイレのように必ず出さなければいけないものではありません。

感情に囚われて冷静な判断が出来なくなり、暴走することがないように、「この感情を表に出すことに正当性があるのか?」という点は必ず考える癖をつけておく必要があるでしょう。

つまり、感情を感じるのは生理現象だから仕方がないけれど、感情を「消化」するか、感情を「排泄」するのか、その時々で判断する必要があるということです。

もちろん、ポジティブな感情であればむしろ積極的に外に出すべきだと思います。あなたが笑えば、家庭も職場もいい雰囲気になると思います。

その一方で、ネガティブな感情は扱い方を間違えると人間関係を破壊するなどして取り返しのつかないことにもなりかねませんから、くれぐれも注意する必要があります。

感情の消化とは?

感情の「消化」とは、例えば嫌なことがあった時に「ムカつくことがあったけど、ムカつくほどのことでもなかったな。」と頭の中で処理することです。

感情の排泄とは?

感情の「排泄」とは、例えば嫌なことがあった時に「マジでムカつきました!どうにかしてください!」と他人に感情をぶつけることです。

トイレを我慢できないのは、本当に排泄しないことにはどうしようもないからですが、感情については排泄する前に100%頭のなかで消化する道を模索するべきです。

ですから、ここから先は「感情を排泄するべきか?」という点に焦点を当てて解説します!

感情の取り扱い方

感情を表に出すべき(排泄すべき)と判断する基準は2つあります。

1つ目の基準は、「予想外の出来事だったか?」です。

2つ目の基準は、「ゴールを達成する上でプラスになるか?」です。

基準1)予想外だった?

想定内の出来事であれば、そもそも感情を外に出す必要性を感じないでしょう。なぜならば、想定内の出来事で感情を表に出すのは筋違いだからです。

例えば、「いつも失敗ばかりする部下が、いつものように失敗した。」とします。失敗することがあらかじめわかっている場合、予想内の失敗を未然に防ごうとしなかったのは、むしろ上司であるあなたの責任でもあります。

もちろん「失敗させることで部下を教育する」という方針なのであれば、失敗する部下の仕事っぷりを傍観していてもいいでしょうし、失敗した部下を叱ってもいいでしょうが、本気で怒るなどして感情をぶつける必要はどこにもありません。

もし他人にネガティブな感情をぶつけそうになったら、「予想」ではなく、「期待」を押し付けようとしていないか立ち止まって考えてみるべきです。

先ほどは上司(あなた)と部下という関係のなかで、失敗をどのようにして取り扱うか?という点について取り上げましたが、似たような事例はあちこちにあります。

例えば「配偶者」に感情をぶつけるとき、「男ならもっと稼ぐべき!」とか、「女ならもっと家事をしろ!」などの「過度な期待」を押し付けてしまったばかりに、頭の中が感情に支配されてしまうパターンは本当に多いです。

また「子ども」に感情をぶつけるとき、「もっと運動や勉強成績が良くてもいいのではないか?」などと、親の期待を一方的に押し付けていないか立ち止まって考えてみるべきです。

繰り返しになりますが、「予想外れ」と「期待外れ」を混同してしまわないようにしましょう

あくまでも感情(特にネガティブな感情)を表に出すのは、予想外の出来事が発生した時に限るべきです。

基準2)あなたにとってプラスか?

感情を表に出す前に、あなたにとって感情を表に出すことがプラスになるか?という点は、一瞬でもいいので立ち止まって考えるべき問題です。

あなたもご存知だと思いますが、感情を表に出すことは実際に疲れるのです。本気で怒れば息切れするし、悲しい時ですらお腹が空きます。

ゴールに向かって邁進するあなたには、毎日の些細な出来事に平穏な心をかき乱されて欲しくありませんから、エネルギーを使う大切な感情の使い方を間違えてほしくありません。

ではあなたにとって正しい感情の使い方とは、どのようなものでしょうか?

ズバリ答えは「あなたがあなたのゴールを達成する上で、感情を表に出すことがプラスになること」が、感情を表に出す必要条件であるべきです。

あなたには、ゴールに関係のないところで感情を浪費している余裕はないはずです。ろくでもないこと(ゴールに関係のないこと)に付き合って感情を消費させてはいけないのです。

以上、感情を排泄すべきか判断する基準を2つ紹介しました。

いかがでしたでしょうか?指摘されてみれば、「当たり前」だと感じたと思いますが、多くの人にとっては当たり前ではないのです。

多くの人は「想定内」のことや「期待外れ」のこと、もしくは「ゴールから遠ざかること」ばかりに感情を投入しています。いわば感情の無駄使いをしているのです。

感情の無駄遣いをしないようにするためには、日常生活で訓練するしか方法がありません。

感情の使い方についてトレーニングしても、筋トレと違って目に見える変化はありませんが、ゴールに少しでも近づきたいなら地道に鍛錬し続ける価値があります。

それでは感情の無駄遣いを防ぐトレーニングを紹介しますので、慣れるまでは日常生活で意識的に実践することをおススメします。

感情の無駄遣いを防ぐ方法

手順1
基準を当てはめる

日常生活で感情に支配されそうにあったら、常に以下2つの基準を思い出してください。

  • 予想外か?(期待外れではない)
  • ゴールから遠ざかるか?

もし日常生活でそれほど感情に支配される経験がないのであれば、テレビ・新聞・ネットニュースなどをチェックするのも一つの手です。

あなたが感情に支配されそうになったり、他人が感情に支配されている状況を目撃したら、「本当に感情の排泄すべき案件なのだろうか?」と自問自答してみましょう!

手順2
基準を更新する

手順1の結果、「感情を排泄すべき」と判断した場合であっても、次にまた同じようなことが発生した時に対処できるようにしておくべきです。

仮に「感情を排泄すべき」と判断した場合、あなたがやるべきことは2つあります。

1つ目は「予想外」を「想定内」にする努力です。

2つ目はゴールの見直しです。例えば、感情を排泄すべきか判断する基準となるべきゴールがなければ、新たなゴールを設定する必要があるでしょう。

感情に囚われた人

感情を適切に消化する方法を理解しなければ、感情にとことん支配されることになります。

週刊誌が欲しい

ある知人と会話している最中に、知人が本気で「許せない!」と怒りの表情を浮かべたことがあります。

何をそんなに怒っているかと思って友人の話を聞けば、「財務官僚のセクハラ事件」が許せないのだそうです。

友人曰く、わたしとの楽しい飲み会が終わった後に、近くの本屋に立ち寄って週刊誌を買うとのことでした。おそらく帰りの電車で週刊誌をチェックするのでしょう。

近年の週刊誌は、雑誌を売るためだけに露骨に大衆の感情を煽り立てるということを平気でやっています。

人の悪口ばかりをいう人が身近にいたら、あなたはどう思いますか?もしくはあなたが他人の悪口をいう時、どんな気持ちになりますか?

きっとあなたは、「嫌な気持ち」になるはずです。そうなんです。悪口のある空間にいるだけで、エフィカシーが下がるのです。(結果的にコンフォートゾーンも下がる)

つまり下劣なメディアにあおられた結果、あなたは4つのモノを失ってしまうのです。

1つ目は「感情を有効活用する機会」、2つ目は「週刊誌を買うためのお金」、3つ目は「大切な時間」、4つ目は「高いコンフォートゾーン」です。くれぐれも大事なものを失わないように注意しましょう!

感情を出せないストレス

便秘になると腹は出るし、トイレも辛くて大変です。

実は感情も同様です。感情の排泄を我慢をするとストレスばかりが蓄積してしまいます。それにも関わらず、多くの人が「感情の便秘状態」になっています。

例えば、何かあなたに不利益な事件が起きて腹が立ったとします。生理現象として怒りの感情を確認したというわけです。

しかし多くの日本人は怒りを消化することも排泄することもしません。どうするかというと「我慢する」のです。

実際多くの日本人が怒りを感じると、ほとんどは「黙る」ということをします。もしくは我慢できずに「声が大きくなる」とか、「その場を立ち去る」という行動をとるか、怒りをまったくコントールできずに「泣く」人もいます。

最後に&次回予告

感情を我慢しつづけると、その感情はいつか暴発するリスクがあります。

感情が暴発した時、あなたは大切なものを失うかもしれません。ですから感情は、「消化」するか「排泄」するか適切に判断できるようになりましょう。

前回と今回の講義では、感情と上手に付き合う上での大原則というべきテーマについて解説してきました。次回からは感情を上手に付き合う心構えをいくつか取り上げて、解説していきたいと思います。

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