【空(大乗仏教)#2】ユークリッド幾何学

前回の講義では、大乗仏教における相互依存関係としての「空」の概念について解説しました。

あらゆるものの相互関係に注目すると、むしろ相互関係を前提とした概念の存在に気付くことができるはずです。

つまり「相互関係があるからこそ存在するもの」というべきものがこの世にはあるのです。

「相互関係があるからこそ存在するもの」がある・・といわれてもピンとこない人がほとんどだと思いますので、実例を挙げていきます。

たくさんの例を知ることで、大乗仏教における「空」の世界を体験してほしいと思います。

ユークリッド幾何学

義務教育でユークリッド幾何学を学習したはずですので、ユークリッド幾何学の観点から大乗仏教における「空」について説明したいと思います。

ユークリッド幾何学といってもこむずかしい証明問題などについて話をするつもりはありませんので安心してください。

次の質問について考えてみてください↓↓↓

幾何学が前提とする点、線、円はあるのでしょうか?

『線』はあるのか?

数学上、線には幅がなく長さだけがあるということになっていますが、そのような「線」は存在するのでしょうか?

どんなに細く鉛筆を削ったところで、ほんの少しの幅はあるに決まっています。長さだけあって少しの幅もない「線」などというものはありえません。

『点』はあるのか?

数学上、点には面積がないことになっています。しかし「線」と同様に、そのような「点」は存在しません。

『円』はあるのか?

数学上、円は点から等距離にある点の集合ということになっていますが、「点」が存在しないとしたら、果たして「円」は存在するのでしょうか?

関係が存在を生み出す

点も線も円も、実在するものではなく、モデルです。モデルとは、すなわち仮に考えておいたものに過ぎません。

そしてここでいう「仮に考えておく」という発想こそが、仏教の思想そのものなのです。

「仮に考えておいたもの」とは有でもなく、無でもありません。それは有であると同時に無でもあるのです。つまりそれは有無以外のものなのです。

有無以外のものだとしたら、一体全体、それはなんなのでしょうか?

ズバリ答えは・・・・有無を包括するもの、、、、、すなわち『』なのです。

よくわからない人が多いと思うので、「点」と「円」の関係について注目してみれば、空についての理解が深まるはずです。

点と円

点は、円の中心に存在するものです。一方で円は、点から等距離に存在する点の集合です。

つまり点があるから円が存在し、円があるから点が存在するのです。すなわち点があるから円を定義できるし、円があるから点が定義できるのです。図示すると以下のようになります。

点と円の相互関係

縁起とは?

縁起とは「すべての物事は、ほかの何かとの関係性のなかに存在している」ということでしたが、今回の講義によって理解が深まったのではないでしょうか。

点と円の関係がそうであったように、すべての物事が他のものとの関係性によって成り立っていることを直感的に理解してもらえたと思います。次回はまた別の角度から縁起についての理解を深めていただく予定です。

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